企業主導型保育園の経理で注意すべきこととは?その1

 

企業主導型保育事業は、平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度です。この制度を活用することで株式会社などの企業が、自社や提携する企業の従業員、あるいは地域の子育て世代のために保育所を運営し児童を保育することができます。

 

鹿児島県でも企業主導型保育園が続々と開園し、地域の待機児童問題の解消に一役買っているようです。各社、子どもたちのために保育の質を担保し安全で魅力的な保育園とするために日々心血を注いでいるものと思われます。

 

しかし株式会社などの営利企業にとっては、企業主導型保育事業で要求される経理に戸惑いを覚えることでしょう。そこで中小企業が企業主導型保育事業を運営するにあたり、経理面で注意すべきことを解説いたします。

 

1経理規定

経理規定を整備する必要があります。もちろん経理規定が存在するだけではダメで、企業主導型保育事業に求められる所定の要件を満たす内容である必要があります。中小企業ではそもそも経理規定が存在しないことが多いため、経理規定を整備し、その定めどおりに運用するということに違和感があるのではないでしょうか。

 

2区分経理

保育事業と、その他の事業とで区分経理を行う必要があります。早い話が部門別会計です。毎年度末の完了報告のための材料兼添付書類としての決算書ということであれば損益計算書だけの部門別会計でも、工夫次第ではありますがOKです。しかし企業主導型保育事業の事務員さんに経理事務を任せる場合は損益計算書に加えて貸借対照表も部門別会計を行うべきです。これは会計ソフトへの会計データの入力を考えた場合、法人全体の貸借対照表しか存在しない(参照できない)のでは入力後にセルフチェックを行いづらく、生産性が低くなってしまうためです。

また、保育事業とその他の事業との間の資金移動を分かりやすくするためにも、仕訳では必ず本支店勘定を使うようにしましょう。

例:本社の預金通帳から保育事業で使用する駐車場代5万円を支払った場合

好ましくない仕訳 地代家賃(保育事業)5万円 / 普通預金(本社)5万円

好ましい仕訳 本支店勘定(本社)5万円 / 普通預金(本社)5万円

       地代家賃(保育事業)5万円 / 本支店勘定(保育事業)5万円

 

3保育事業に係る会計年度

保育事業の会計期間を4月1日から3月31日とする必要があります。法人全体の決算が3月である場合は問題ありませんが、そうでない場合は保育事業に関しては年に2回決算業務を行うこととなります。なお、年度末の完了報告の締め切りは原則として4月10日です。3月末からたった10日で決算を終えて完了報告を行うためには、請求書の収集や経費精算、給与計算など爆速で処理する必要があります。

 

4取引に関する契約書と発注伺いと発注書・発注請書

経理規定で定めた金額を超えるような大きい買い物をするなど、大きい取引をするときは必ず契約書を作成する必要があります。事前に定めた金額以下の取引であっても、例えば10万円を超える取引の場合は発注書を発行し、取引相手から発注請書を徴収する必要があります。

さらに、取引を発注する場合は事前に保育事業所内で発注伺いを作成し申請→承認のプロセスを終えておく必要もあります。

中小企業では代表者の判断の速さが大企業と比べた強みになり得ます。社員数5名から30名程度の法人であれば、社長の決定は絶対だと思われますし、ずばり社長の即断即決でスピード感を持ってものごとをすすめられるのが強みです。しかし企業主導型保育事業においては、社長が良いって言いましたから買いました!は認められません。このあたりが、企業主導型保育事業を運営する中小企業においては法人全体のスピード感とだいぶかけ離れていて違和感を感じる方が多いのではないでしょうか。

 

5出勤簿

園児の登降園時間の管理単位と職員の出退勤時間の管理単位をそろえる必要があります。たとえば園児の登降園時間を1分単位で管理している場合は職員の出退勤時間も1分単位で管理することとなります。この場合、タイムレコーダーを使っていると例えば8時から17時が定時の職員の出退勤時間は厳密には7時58分から17時3分、のように微妙な端数が生じることとなりますが当然に労働時間となります。

出勤簿にハンコを押して出勤!定時で働いたものとする!という労働時間管理を行なってきた法人にとってはなかなか厄介なことなのではないでしょうか。

 

まとめ

中小企業のなかには経理や労務管理を、エイヤッとざっくり行ってきた法人も少なくないと思います。そういった法人では企業主導型保育事業で求められる経理レベルの高さに驚かれているかもしれません。しかしぜひこれをチャンスと捉え、保育事業だけでなく法人全体の経理レベルを高める機会としていただきたいと思います。



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