2021年12月10日
会社の利益には法人税が課税されるため「どうすれば節税できるか」と節税について熱心に調べられている経営者の方は多いと思います。しかし、会社により多くのお金を残すという企業にとって最も大事な観点からいえば、「節税対策はせずに、税金をきっちり収める」ことを推奨します。
今回の記事では、中小企業に知っておいて欲しい節税対策のマイナス面と、正しいお金の残し方についてご紹介します。
この記事の監修者
- 鯵坂税理士事務所 代表 鯵坂健太郎
- 保有資格(税理士/基本情報技術者/診療情報管理士//医療情報技師/保育士)
節税対策が逆効果になる3つのケース
会社で予想以上の利益が出た場合、まず心配になるのが法人税です。
利益が増えると法人税の課税額もアップするため、儲かり始めたタイミングで節税を考えている方は多いと思います。
しかし、節税は簡単にいうと「利益を少なくする」事です。もちろん利益を少なくすることで納めるべき法人税は減りますので、短期的には得をした気分になりますが、長期的な視点で節税を考えると、未来の会社経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。
まずは節税が会社にとって逆効果になってしまう3つのパターンをご紹介します。
節税をした結果、会社にお金が残らなくなる
世に出回っている多くの節税方法は、会社の資金を減らすことに繋がります。
例として、法人保険加入での節税効果について考えてみましょう。
保険料の全額もしくは半額は経費扱いにできますので、節税対策としてよく紹介されます。
法人税率を30%、保険料の全額を経費として扱えると仮定します。
この場合、保険加入によって200万円の節税をするために、333万円もの保険料を支払う必要があるのです。(100万円÷30%=333万円)
せっかく100万円を超える利益を上げたはずなのに、保険料を300万円も払ってしまえば会社に残るお金は減ってしまうという逆転の現象が起きてしまいます。
節税をすることで、一時的に得をした気持ちになりますが、結果的に会社に残るお金が減ってしまうものは避けましょう。
銀行融資や助成金の審査が通りにくくなる
節税をすることで、銀行からの融資が受けづらくなる・助成金の審査が通りにくくなることも、節税のマイナス面の一つです。
金融機関は「融資したお金をちゃんと返済できる力が会社にあるかどうか」を重視します。節税をすることで、会社には「利益や貯金が少ない」状態です。
そのため金融機関から「キャッシュが少なく返済が見込めない企業」と判断されてしまいます。
企業の売上が順調ならいいですが、赤字になってしまい資金に余裕がなくなり融資を考えなくてはいけない場面もでてきます。
その時に節税だけに力を入れて、会社に純資産が溜まっていないと融資は不利になってしまいます。
特に融資が必要な場面が多い中小企業では、融資とのバランスを考えながら節税を考えなくてはいけないのです。
会社売却の際に価値が低くなる
前述したように節税をすることで会社の純資産は減ってしまいますので、いざ会社売却をする際の評価額も下がってしまう可能性があります。
今は経営が順調であっても、将来事業継承や事業縮小などの理由で会社を売却する必要が出てくることがあります。
そうなった場合、一般的に会社の価値は貸借対照表による純資産から判断されます。
ただ、節税をして利益を出さないままでいると会社の純資産が目減りして会社の価値が低くなっていますので
その結果、経営者が考えているような価値での売買はできなくなるケースもあります。
資産を減らさない節税対策(経営セーフティ共済)
今まで節税対策のマイナス面について紹介してきましたが、全ての節税対策がマイナスなわけではありません。
会社の資産を減らさずに節税対策ができ、かつ会社を守ることもできる「経営セーフティ共済」への加入はオススメします。
経営セーフティ共済とは、取引先が倒産してしまった際に巻き込まれて連鎖倒産したり、経営難になったりすることを防ぐことを目的とした制度です。
加入することで年間最大240万円(20万円×12カ月)が必要経費(法人の場合は損金)になるなど、多くのメリットのある制度です。
経営セーフティ共済に支払った金額は、資産として計上しても法人税の計算上は経費とすることができるため、資産が減らなくて済むこともメリットです。
加入資格は、1年以上事業を行っている中小企業者が加入資格なので、未加入の方にはオススメいたします。
中小企業の正しいお金の残し方
法人税を支払うのは嫌だという気持ちはよく理解できます。
しかし、中小企業の経営を安定・成長させるのであれば、資産を減らす節税をするのではなく、利益を上げること=会社の価値を上げることを優先させましょう。
そのためには法人税をしっかり払うという意識が必要です。
無駄な節税をやめる
⇩
結果的に会社にお金が残る
⇩
その資金で事業投資が可能になる
⇩
事業投資によって利益が増える
⇩
利益が出ているので融資が降りる
⇩
大きな資金でさらなる投資が可能になる
⇩
利益が増える。
という好循環を目指しましょう!
融資が受けられる・価値のある会社となることで、法人税を支払った以上のリターンが得られるようになります。
まとめ
法人税をなるべく支払わないように節税することは、長期的にみて会社経営にマイナスの影響がある場合もございます。
目の前の節税ではなく将来を見据えた対策を考えていくことが経営者には求められます。
安定した会社経営のためにも、長期的な節税や投資方法を考え、専門家に分析とアドバイスをしてもらうことが必要です。
鯵坂税理士事務所では経営者の皆様と一緒に悩み考えながら経営に対する最適なアドバイス/節税対策を行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。