企業主導型保育園の経理で注意すべきこととは?その2

2021年10月31日

前回のコラム企業主導型保育園の経理で注意すべきこととは?その1では、企業主導型保育園の経理全般のなかで注意すべき項目を少しだけご紹介しました。

今回は電子帳簿保存法(以下「電帳法」)の改正が企業主導型保育園に与える影響についてご紹介します。

 

電帳法の改正とは

電帳法創設の経緯

国税庁HPには電帳法創設の経緯について以下のように記載があります。

 高度情報化・ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野でもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきており、経済界をはじめとする関係各界から、帳簿書類の電磁的記録(いわゆる電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、かねてから強い要望が寄せられていました。
 政府においては、こうした要望を受けとめ、規制緩和推進計画等の閣議決定、緊急経済対策、市場開放問題苦情処理対策本部決定等において、平成9年度末までに、帳簿書類の電磁的記録等による保存を容認するための措置を講ずることを決定していました。
 このような関係各界からの要望や政府全体としての取組を踏まえ、平成10年度税制改正の一環として、適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存に係る負担軽減を図る等の観点から、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が行われました。

 

なにやら難しいことがたくさん書いてありますが、帳簿書類を電子データで保存すると便利だよね。と書いてあります。

 

こうして創設された電帳法はその後、数回の改正を経てレシートや領収書、請求書等をスキャナで読み取ったものを(一定の要件をクリアして)電子的に保存すれば、紙の原本は廃棄しても良いという内容になっていきました。

令和3年度の電帳法改正

改正内容の解説は国税庁ホームページにお譲りするとして。

ここでお伝えしたいのは以下の2点です。

  1. 電子取引した証憑書類の電子保存の義務化された
  2. スキャナ読み取りした証憑書類の電子保存が実務的に可能なレベルになった

1.について

事業者が電子メールの添付ファイルやウェブサイト等からダウンロードする等して取得する領収書や請求書は2021年1月1日以後は、紙での保存は認められず電子的に保存することが義務付けられるというものです。しかも、ひとくちに電子的に保存するといっても保存の方法が様々あり、ルールがなかなかに難解です。

 

2.について

改正前は、スキャナ読み取りした証憑書類を電子保存したうえで紙原本を廃棄するために様々な要件をクリアせねばならず、経理実務を考えると電子保存は中小企業にとってはあまり現実的なものではありませんでした。しかし今回の改正で、中小企業においてもスキャナ読み取りした証憑書類の電子保存が身近なものとなる可能性があります。

考えられる中小企業の対応

電帳法の改正後の世界では中小企業は以下のいずれかの対応をされるのではないかと思います。

  1. 電子取引の証憑書類を電子保存することのみに対応し、経理の業務フローをあまり変えない
  2. 電子取引の証憑書類を電子保存することに加え、経理の業務フローを見直してスキャナ読み取りした証憑書類の電子保存と紙原本の廃棄に取り組む

 

もともと経理がきっちり機能していて業務フローが確立されているような事業者であれば2.に取り組むことで生産性の向上につながるかもしれませんね。

 

企業主導型保育園での対応

私共のクライアント企業においても、電帳法の改正を機に経理に業務フローを見直したうえで証憑書類の電子保存と生産性の向上を目指す機運が高まっています。

従来は紙で保存していたものを電子保存するだけで生産性が上がるというわけではないのですが、おおいにきっかけにはなっています。

 

そこで企業主導型保育園においても、電帳法に沿って電子保存を行えば紙の原本を廃棄しても良いのか、児童育成協会に質問いたしました。これからある企業が電子保存に取り組むのであれば、その企業のなかの一部門である企業主導型保育園においても電子保存に取り組むのが必然だからです。

しかし、2021年10月29日15時に行った児童育成協会に対する電話質問への回答では、紙の原本での保存が必須とのことでした。

 

企業主導型保育園では改正電帳法に沿った電子保存をしたとしても、紙原本の廃棄はNGです。

残念!!