社会福祉法人の法人税は、原則として非課税です。ただし、法人税法上の「収益事業」(法人税法施行令第5条に列挙された34業種)を、継続して事業場を設けて行う場合には、その所得に対して法人税が課され(年800万円以下の部分は15%、超える部分は19%)、申告が必要になります。
この記事では、非課税となる範囲、申告が必要になるケース、軽減税率、みなし寄附金制度、そして消費税・固定資産税など法人税以外の税目までを整理します。
社会福祉法人と法人税の基本的な関係
社会福祉法人は、社会福祉法第22条において「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人」と定義されています。法人税法上は「公益法人等」(法人税法第2条第6号・別表第二)に分類され、一般の株式会社などの「普通法人」とは異なる課税上の取扱いを受けます。
法人税法第4条第1項では、内国法人は法人税を納める義務があるとしつつ、公益法人等については「収益事業を行う場合」等に限って納税義務が生じると定めています。また、法人税法第6条では「内国法人である公益法人等又は人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、前条の規定にかかわらず、各事業年度の所得に対する法人税を課さない。」と明記されています。
つまり、社会福祉法人は原則として法人税が非課税であり、法人税法上の「収益事業」を行った場合にのみ、その収益事業から生じた所得に対して法人税がかかるという仕組みです。
法人税が非課税となる範囲
法人税法上の収益事業かどうかは、社会福祉事業かどうかではなく、事業の種類(業種)で判定します(法人税法第2条第13号、施行令第5条第1項)。社会福祉事業であっても、34業種のどれかに当たり、除外規定にも当たらなければ、収益事業になります。
社会福祉事業(第一種・第二種)
社会福祉法第2条に定められる第一種社会福祉事業(特別養護老人ホーム、障害者支援施設の経営など)や第二種社会福祉事業(保育所の経営、障害福祉サービス事業、老人デイサービス事業など)の多くは、34業種に当たらないか、下で説明する除外規定(医療保健業・席貸業など)に当たるため、法人税はかかりません。
ただし、就労支援事業の生産活動(製品の製造・販売など)は、物品販売業や製造業に当たりえます。後で説明する障害者等の従事者要件(施行令第5条第2項第2号)に当たるかどうかも含め、事業ごとに判定が必要です。
医療保健業の特例
社会福祉法人が行う医療保健業は、法人税法施行令第5条第1項第29号ロにおいて収益事業から除外されています。したがって、社会福祉法人が運営する診療所や病院の所得には法人税がかかりません。これは、同じ医療行為でも医療法人であれば課税される点と大きく異なります。
不動産貸付業の特例
社会福祉法人が社会福祉法第2条第3項第8号に掲げる事業(生計困難者のための低額な料金での簡易住宅の貸付等)として行う不動産貸付業も、施行令第5条第1項第5号ハにより収益事業から除外されています。
席貸業の特例
社会福祉事業として行われる席貸業は、施行令第5条第1項第14号ロ(2)により収益事業に含まれません。
法人税の申告が必要になるケース
社会福祉法人であっても、法人税法施行令第5条に列挙された34業種に該当する事業を、継続して事業場を設けて行う場合には、その事業は「収益事業」として法人税の申告が必要になります。納付額は、課税所得と税額の計算結果によります(欠損ならゼロになることもあります)。
実務上、社会福祉法人で法人税の申告が必要になる典型例は次のとおりです。
どの事業が収益事業に該当するかの判定基準、除外規定の具体例、区分経理の実務については、社会福祉法人の収益事業とは?課税・非課税の判断基準で詳しく解説しています。
- 売店・自動販売機の運営 --- 施設内で利用者や来訪者に物品を販売する場合は「物品販売業」に該当します
- 駐車場の外部貸出 --- 施設の駐車場を外部に有料で貸し出す場合は「駐車場業」に該当します
- 不動産の賃貸 --- 不動産の貸付けは、原則として「不動産貸付業」に該当します。除外されるのは、生計困難者のための簡易住宅の貸付け(社会福祉法第2条第3項第8号の事業。施行令第5条第1項第5号ハ)や、国・地方公共団体に直接貸し付ける場合(同号ホ)などに限られます。貸付先がその建物を社会福祉事業に使う場合でも、課税されることがあります
- 公益事業 --- 社会福祉事業以外の公益事業も、34業種に当たるかどうかで個別に判定します
なお、法人税法施行令第5条第2項第2号では、身体障害者、生活扶助を受ける者、知的障害者、精神障害者、65歳以上の者、寡婦などがその事業の従事者の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合は、たとえ34業種に該当しても収益事業から除外されます。半数以上かどうかは、その事業に従事した者の延人員で判定します(法人税基本通達15-1-8)。就労支援事業がこれに該当する場合があります。
社会福祉法人の法人税率
社会福祉法人が収益事業を行い法人税の申告が必要となった場合でも、普通法人より低い税率が適用されます。
法人税法第66条第3項では、公益法人等(一般社団法人等を除く)に対して課する法人税の税率は19%と定められています。さらに租税特別措置法第42条の3の2により、令和9年3月31日までに開始する事業年度は、所得のうち年800万円以下の部分が15%に下がります。
| 法人の種類 | 年800万円以下の部分 | 年800万円を超える部分 |
|---|---|---|
| 普通法人(資本金1億円以下の中小法人) | 15% | 23.2% |
| 普通法人(資本金1億円超) | 23.2% | 23.2% |
| 社会福祉法人(公益法人等) | 15%(所得が年10億円を超える事業年度は17%) | 19% |
年800万円以下の部分の15%は、租税特別措置法による時限措置です。国税庁の説明では、令和7年4月1日以後に開始する事業年度で所得が年10億円を超える年度は、この部分が17%になります。
法人税のほかに、地方法人税、法人住民税、法人事業税などもかかります。
みなし寄附金制度とは
社会福祉法人にとって重要な税務上の優遇措置の一つが、みなし寄附金制度です。
法人税法第37条第6項では、公益法人等がその収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、「寄附金の額とみなす」と規定されています。そして、法人税法施行令第73条第1項第3号ロにより、社会福祉法人の寄附金の損金算入限度額は、収益事業に係る所得金額の50%と年200万円のいずれか大きい額とされています。
具体的に言えば、収益事業で得た利益を社会福祉事業(非収益事業)に繰り入れることで、その繰入額が寄附金とみなされ、所得の50%(または200万円)まで損金に算入できるのです。
計算例
収益事業の所得が500万円の場合:
- みなし寄附金の限度額 = 500万円 x 50% = 250万円
- 250万円を社会福祉事業に繰り入れれば、課税所得は250万円に圧縮
- 法人税額 = 250万円 x 15% = 37.5万円(800万円以下の部分なので15%。ほかに地方法人税・住民税・事業税がかかります)
この制度を活用するためには、事業年度中に収益事業から非収益事業への資金の繰入れを経理上明確に処理しておく必要があります。決算時に忘れず振替処理を行うことが実務上のポイントです。
法人税以外の税金(消費税・固定資産税など)
社会福祉法人は法人税以外にも、いくつかの税目で優遇措置を受けています。主なものを整理します。
消費税
社会福祉事業として行われるサービス(介護保険サービス、障害福祉サービスなど)は、原則として消費税が非課税です(消費税法第6条第1項、別表第二)。ただし、利用者が選んだ特別な居室・食事の提供や、通常の実施地域外への交通費など、介護サービスに付随する費用の中には課税されるものがあります(国税庁 質疑応答事例「要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い」)。消費税がかかるかどうかは、法人税の収益事業かどうかとは別に判定します。物品販売などには消費税がかかり、住宅の貸付けのように収益事業でも消費税が非課税のものもあります。基準期間(原則として前々年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合や、インボイスの登録をしている場合は、消費税の申告が必要です(消費税法第9条第1項)。
固定資産税・都市計画税
社会福祉法人が社会福祉事業の用に直接供する固定資産は、地方税法第348条第2項の規定により固定資産税が非課税です。非課税の根拠となる号は施設の種別ごとに分かれており(保護施設、児童福祉施設、老人福祉施設、障害者支援施設など)、社会福祉事業一般については第10号の7が受け皿となっています。ただし、収益事業に使用する資産や、社会福祉事業に直接供していない遊休資産には課税されます。
事業税
社会福祉法人の事業の所得のうち、収益事業に係るもの以外には事業税を課すことができません(地方税法第72条の5第1項)。つまり、事業税は収益事業の所得にだけ課されます。税率は、医療法人や協同組合などの「特別法人」(同法第72条の24の7第7項)には社会福祉法人が含まれないため、普通法人と同じ区分の税率です。
法人住民税(均等割・法人税割)
収益事業を行わない社会福祉法人には、都道府県民税・市町村民税の均等割も法人税割も課すことができません(地方税法第25条、第296条)。収益事業を行うと、均等割が課されます。法人税割は法人税額をもとに計算するので、収益事業が赤字で法人税額がゼロなら、法人税割もゼロです。
登録免許税
社会福祉法人が受ける一定の登記は、登録免許税が非課税になります(登録免許税法第4条第2項、別表第三)。対象になる登記の範囲は別表第三で決まっており、証明書類の添付が必要なものもあります。登記の前に、司法書士や所轄庁に確認してください。
まとめ
社会福祉法人の法人税に関するポイントを整理すると、次のとおりです。
- 社会福祉法人は法人税法上の「公益法人等」に該当し、原則として法人税は非課税
- 法人税法施行令第5条に定める34業種の収益事業を行う場合にのみ課税される
- 社会福祉事業として行う医療保健業・不動産貸付業などは収益事業から除外される特例がある
- 収益事業の所得に課される法人税率は、年800万円以下の部分が15%(所得が年10億円を超える事業年度は17%)、超える部分が19%(普通法人の23.2%より軽減)
- 社会福祉事業でも、就労支援の生産活動や不動産の貸付けなどは収益事業に当たりうる。業種で判定する
- 収益事業を行うと、法人住民税の均等割・法人税割と事業税もかかる
- みなし寄附金制度により、収益事業の所得の50%(それが200万円未満なら200万円)まで損金算入が可能
- 法人税以外にも、固定資産税・登録免許税などで優遇措置がある
社会福祉法人の税務は、どの事業が収益事業に該当するかの判定が最も重要であり、判定を誤ると申告漏れや過大納付につながるリスクがあります。特に売店運営、駐車場貸出、公益事業と社会福祉事業の区分などは判断が難しいケースが少なくありません。
鯵坂税理士事務所では、社会福祉法人の経理代行・税務申告を専門的にサポートしています。収益事業の判定や法人税申告でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
この記事で引用した法令
- 法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第6号・第13号、第4条、第6条、第37条、第66条 — e-Gov法令検索
- 法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第5条、第73条 — e-Gov法令検索
- 租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第42条の3の2 — e-Gov法令検索、国税庁タックスアンサー「No.5759 法人税の税率」
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第6条、第9条、別表第二 — e-Gov法令検索
- 地方税法(昭和25年法律第226号)第25条、第72条の5、第72条の24の7、第296条、第348条 — e-Gov法令検索
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条、第22条 — e-Gov法令検索