社会福祉法人の理事会と評議員会は、名前が似ていて混同されがちですが、まったく別の規律で運営されます。同じつもりで運営すると、決議が無効になることがあります。
大きな違いは次の3点です。
- 理事会は業務執行を決定し、理事の職務執行を監督し、理事長を選定・解職する機関
- 評議員会は役員の選任や計算書類の承認など、法令・定款で定められた事項を決議する機関
- 招集通知の方式、議題の記載義務、通知にない事項を決議できるかどうかが、条文レベルで異なる
この記事では、両者の違いを条文にさかのぼって整理し、役員改選の年に必要な段取りまで解説します。
理事会と評議員会の違い(早見表)
| 項目 | 理事会 | 評議員会 |
|---|---|---|
| 構成 | すべての理事(法第45条の13第1項) | 評議員 |
| 主な職務 | 業務執行の決定、理事の職務執行の監督、理事長の選定・解職(法第45条の13第2項) | 役員・会計監査人の選任(法第43条第1項)、計算書類の承認、定款変更等 |
| 招集権者 | 各理事。定款または理事会で招集権者を定めたときはその理事(法第45条の14第1項) | 理事(法第45条の9第3項) |
| 招集通知の期限 | 会日の1週間前まで(定款で短縮可) | 会日の1週間前まで(定款で短縮可) |
| 通知の方式 | 規定なし | 書面(電磁的方法は評議員の承諾が必要) |
| 議題の記載 | 法律上の義務なし | 必要(理事会の決議で定めた「目的である事項」と議案の概要) |
| 通知にない事項の決議 | 可能 | 不可(法第45条の9第9項) |
| 招集手続の省略 | 理事・監事の全員の同意があれば可 | 評議員の全員の同意があれば可(ただし日時・議題を決める理事会の決議は省略できない) |
| 決議の省略(書面決議) | 定款の定めがあれば、議決に加わることができる理事全員の同意+監事が異議を述べないこと | 議決に加わることができる評議員全員の同意 |
| 決議要件 | 議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数(法第45条の14第4項) | 議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数(法第45条の9第6項) |
| 特別決議 | なし | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上(法第45条の9第7項) |
以下、それぞれの根拠を確認します。まず、会議を構成する「人」としての理事と評議員の違いから見ます。
理事と評議員の違い(選ぶ人・任期・人数・兼職)
理事会は「すべての理事」で(法第45条の13第1項)、評議員会は「全ての評議員」で組織します(法第45条の8第1項)。会議の違いの前に、メンバーそのものの決まりが違います。
| 項目 | 理事 | 評議員 |
|---|---|---|
| 誰が選ぶか | 評議員会の決議(法第43条第1項) | 定款の定めるところによる(法第39条) |
| 任期 | 選任後2年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで。定款で短縮可(法第45条) | 選任後4年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで。定款で6年まで伸長可(法第41条第1項) |
| 人数 | 6人以上(法第44条第3項) | 定款で定めた理事の員数を超える数(法第40条第3項) |
| 兼職の制限 | 監事は理事・職員を兼ねられない(法第44条第2項) | 役員(理事・監事)や職員を兼ねられない(法第40条第2項) |
| 含めなければならない人 | 社会福祉事業の経営に関する識見を有する者、事業区域の福祉の実情に通じている者、施設を設置している場合は施設の管理者(法第44条第4項) | 社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから選任(法第39条) |
| 親族等の制限 | 各理事の配偶者・三親等以内の親族等が3人を超えて、または理事の総数の3分の1を超えて含まれてはならない(法第44条第6項) | 各評議員・各役員の配偶者・三親等以内の親族等が含まれてはならない(法第40条第4項・第5項) |
ひと言でいうと、理事は法人の業務を決めて執行する側、評議員はその理事を選び、計算書類を承認する側です。そのため評議員は理事や職員を兼ねられず、人数も理事より多くなければなりません。
理事が6人なら、評議員は7人以上が必要です。理事を増やす定款変更をするときは、評議員の人数が足りているかもあわせて確認してください。
評議員の選び方:評議員選任・解任委員会
評議員は「定款の定めるところにより」選びます(法第39条)。多くの法人は、定款で評議員選任・解任委員会を置いています。理事や理事会が評議員を選任・解任する旨の定款の定めは効力を持ちません(法第31条第5項)。
厚生労働省の「社会福祉法人制度改革に関するFAQ」では、委員会の運営について次のように示されています。
- 委員会は合議体なので、3名以上とすることが適当(問11)
- 少なくとも外部委員1名を委員とすることが適当(問9)
- 評議員候補者の提案は理事会の決定に従い理事が行うのが通常で、その説明・質疑のために理事が出席することは可能(問7)
- 委員会の議事録は、評議員会や理事会の議事録と同様に10年間保存することが適当(問4)
定款で「外部委員の出席と賛成」を決議の要件にしている法人もあります。日程を組む前に、委員の顔ぶれと定款の要件を確認してください。
任期の途中で評議員が交代するときは、辞任と後任の選任で進めます。定款で定めれば、補欠の評議員の任期を前任者の残りの任期にできます(法第41条第2項)。
選ばれただけでは就任しない:就任承諾書
評議員・理事・監事は、選任されたうえで本人が就任を承諾して初めて就任します。指導監査ガイドラインでは、就任の意思表示が就任承諾書等で確認できない場合は文書指摘とされています。
また、候補者が欠格事由や親族等の特殊の関係に当たらないことを、法人が選任前に確認しておく必要があります。ガイドラインは、履歴書や誓約書で本人に確認する方法で差し支えないとしています。
理事と監事は評議員会で説明する義務がある
理事全員が評議員会に出席する法律上の義務はありません。ただし、理事と監事は、評議員から特定の事項について説明を求められたら、必要な説明をしなければなりません(法第45条の10)。計算書類や事業報告を説明する理事と監事は、実務上、出席が必要です。
理事会で決めなければならないこと(理事長に任せられない事項)
理事会は、業務執行の決定を理事長などに任せることができます。ただし、社会福祉法第45条の13第4項は、次の事項などの「重要な業務執行の決定」は理事に委任できないとしています。
一 重要な財産の処分及び譲受け 二 多額の借財 三 重要な役割を担う職員の選任及び解任 四 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
何が「重要」で何が「多額」かは、法人が理事会で決めます。指導監査ガイドラインは、委任の範囲をはっきりさせるため、金額・役職・組織の業務などを具体的に決めるべきだとしています。そのうえで、借入については次のように書いています。
なお、理事会において、専決規程等理事に委任する範囲を定めない場合には、全ての借入れに理事会の決議が必要となる。
専決規程などで委任の範囲を決めていなければ、借入はすべて理事会の決議が必要です。規程の改定なども同じで、理事会で決めた委任の範囲に入っていなければ、理事長の決裁だけで施行することはできません。
理事会の招集通知に議案書は必要か(法的義務の有無)
「理事会の招集通知に議案書を添付しないと違法か」という質問をよく受けます。
理事会については、法律上の義務ではありません。
理事会の招集手続は、社会福祉法第45条の14第9項が、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)第94条を準用しています。その第94条はこう定めています。
理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
定めているのは「通知を発しなければならない」ということだけです。書面によるべきとも、議題を記載せよとも、議案書を添えよとも書かれていません。しかも第2項では、理事と監事の全員が同意すれば、招集手続そのものを省略できます。
会社法第368条と同じ構造です。理事会は出席した理事が議論して決める場であるため、あらかじめ議題を縛らない設計になっています。
ただし、法的義務がないことと、送らなくてよいことは別です。計算書類や財産目録を当日に配布されて、実質的な審議はできません。監事は理事の職務執行を監査する立場(法第45条の18第1項)であり、事前に資料を読む時間が必要です。
評議員会は招集時に定めた議題しか決議できない
評議員会は、理事会とは正反対です。社会福祉法第45条の9第9項を読みます。
評議員会は、次項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十一条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第四十五条の十九第六項において準用する同法第百九条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。
指し示されている一般法人法第181条第1項は、次のとおりです。
評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 評議員会の日時及び場所 二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項 三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
つまり、評議員会は、招集の際に定めた議題以外を決議できません(例外は、会計監査人の出席を求める決議だけです)。当日その場で「この件も決めておきましょう」は通用しません。決議しても無効です。
そして、その議題を決めるのは理事会の決議です。ここが実務の急所になります。
評議員会の招集通知は書面でなければなりません
さらに、通知の方式にも違いがあります。一般法人法第182条(法第45条の9第10項により準用)です。
評議員会を招集するには、理事は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない。 2 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。 3 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
評議員会の招集通知は、書面によることが原則です。電子メール等で送る場合は、評議員の承諾が必要です。そして第3項により、通知には第181条第1項各号の事項を記載しなければなりません。
第181条第1項第3号の「法務省令で定める事項」は、社会福祉法人では社会福祉法施行規則第2条の12で「評議員会の目的である事項に係る議案…の概要」とされています。つまり、招集通知に書くのは日時・場所・目的である事項(議題)・議案の概要です。役員の選任であれば、誰を候補者とするかが議案の概要に当たります。指導監査では、役員の選任が適正かを「評議員会の議題(及び議案)を決定した理事会の議事録」で確認します。候補者を決めたことを、理事会の議事録に残してください。
議題の書き方にも注意が必要です。FAQ 問24は、議題が「役員を選任する件」なら評議員が別の候補者を提案できるが、「Aを選任する件」なら「Bを選任する」という議案は議題の範囲外で提案できない、としています。
評議員会でも招集手続は省略できる
評議員の全員の同意があれば、招集の手続を経ずに評議員会を開けます(一般法人法第183条、法第45条の9第10項で準用)。
前条の規定にかかわらず、評議員会は、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
ただし、指導監査ガイドラインは、この場合でも評議員会の日時等に関する理事会の決議は省略できないこと、評議員全員の同意があったことを客観的に確認できる書類を保存する必要があることに注意を促しています。省略できるのは招集通知の発送であって、議題を理事会で決める手続ではありません。
理事会の招集通知には、これらの要件がありません。この非対称を理解しないまま、両方を同じ様式で運用している法人は少なくありません。
理事会・評議員会の定足数と決議要件
理事会の決議要件は、社会福祉法第45条の14第4項です。
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
続く第5項に、見落とされがちな規定があります。
前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
役員退職慰労金の個別の額を理事会で決める議案で、対象の理事が議決に加わっていないか。理事との取引を承認する議案で、その理事が議決に加わっていないか。
指導監査ガイドラインの指摘基準は、次の2本立てです。
- 議案について特別な利害関係を有する理事が議決に加わっている場合
- 議案について特別な利害関係を有する理事がいないことを法人が確認していない場合
いないと判断した場合も、確認したことを議事録に残しておくと、どちらにも対応できます。特別の利害関係がある理事がいるときは、その氏名を議事録に書きます(施行規則第2条の17第3項第4号)。
理事との取引(利益相反取引)
理事が法人と取引するときや、法人が理事の債務を保証するときなどは、理事会で重要な事実を開示して承認を受けます(法第45条の16第4項、一般法人法第84条)。取引をした理事は、取引後に遅滞なく重要な事実を理事会に報告します(一般法人法第92条第2項)。FAQ 問44-3-2は、「重要な事実」の例として、取引の相手方、取引の種類、目的物、数量、価格、履行期、取引の期間を挙げています。
実務では、理事長個人が法人の借入の連帯保証人になるケースで、理事長を議決から外すべきか迷うことがよくあります。条文が例示しているのは「法人が理事の債務を保証する」という逆向きの形です。どう判断したかとその理由を議事録に一文残し、判断に迷うときは所轄庁に確認してください。
外す必要のない理事を議決から外すことにも注意が要ります。定款で「理事総数の3分の2以上」などの要件を加えている議案では、要件を満たせなくなることがあります。
評議員会の決議要件は、社会福祉法第45条の9第6項です。
評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
これが普通決議です。一方、第7項は3分の2以上の多数を要する特別決議の対象を列挙しています。
| 決議の種類 | 要件 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数 | 役員の選任、計算書類の承認など |
| 特別決議 | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上 | 監事の解任、定款の変更、解散など(法第45条の9第7項各号) |
同じ評議員会の中で要件が変わるため、議事録の記載にも注意が必要です。
監事の選任議案には監事の過半数の同意が必要
役員改選の年に見落とされやすい条文があります。
社会福祉法第43条第1項は、次のとおりです。
役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
理事も監事も評議員会が選任します。問題は第3項です。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十二条、第七十三条第一項及び第七十四条の規定は、社会福祉法人について準用する。この場合において、同法第七十二条及び第七十三条第一項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同項中「監事が」とあるのは「監事の過半数をもつて」と、同法第七十四条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとする。
準用される一般法人法第72条は、監事の選任に関する議案の提出には監事の同意を要すると定めており、社会福祉法での読み替えにより「監事の過半数をもって」の同意になります。
つまり、監事を選任する議案を評議員会に提出するには、その前に現任の監事の過半数の同意を得ておかなければなりません。理事会で「監事選任の議案を評議員会に出す」と決議しただけでは足りず、監事が同意したことを書面で残す必要があります。指導監査ガイドラインでは、各監事の同意書、監事の連名の同意書のほか、同意した監事の氏名と署名(または記名押印)がある理事会議事録でも差し支えないとされています。「監事の過半数」は、在任している監事の過半数です。
役員改選は2年に一度、あるいは定款の定めによる周期でしか発生しないため、この手続は毎回のように失念されます。
理事長の選定と、理事長未選定の理事会で議長を務める者
理事長は理事会が選定します。社会福祉法第45条の13第2項第3号および第3項です。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。 三 理事長の選定及び解職 3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
ここで問題が生じます。定款で「理事会の議長は理事長が務める」と定めている法人において、役員改選の直後、まだ理事長を選定していない理事会の議長は誰が務めるのか。理事長を選ぶのは理事会、その理事会の議長は理事長、という循環です。
条文を追うと、社会福祉法第45条の17第3項にたどり着きます。
第四十五条の六第一項及び第二項…の規定は理事長について…準用する。この場合において、第四十五条の六第一項中「この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合」とあるのは、「理事長が欠けた場合」と読み替えるものとする。
読み替えられる第45条の6第1項は次のとおりです。
この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
読み替えると、「理事長が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事長は、新たに選定された理事長が就任するまで、なお理事長としての権利義務を有する」となります。
したがって、前理事長が理事として再選されている場合には、この規定により新理事長が選定されるまで理事長としての権利義務を有し、議長を務められるという整理が成り立ちます。
ただし、前理事長が理事に再選されなかった場合や、定款の書きぶりによっては、この整理では対応できません。実務では、出席理事の互選により仮議長を選出したうえで理事長の選定に入る運用も行われています。
この整理は、FAQ 問39-5でも「理事長が任期の満了又は辞任により退任した場合、新たに選定された理事長が就任するまで、なお理事長としての権利義務を有する」と示されています。
なお、同じFAQは、理事長以外の理事が理事長の職務を代理する旨の定款の定めは無効としています。改正前の定款の「理事長に事故あるときは、あらかじめ指名する理事が職務を代理する」といった規定に頼ることはできません。
議長を誰が務めるかは、最終的に定款の定めによります。役員改選の年を迎える前に、自法人の定款の議長規定を確認し、理事長がいない場合の議長の選び方(互選など)も決めておいてください。
役員改選の年のスケジュールと会議の順序
役員(理事・監事)の任期は2年以内、評議員の任期は4年以内(定款で6年まで)なので、役員と評議員の改選の年は、いつも重なるとは限りません。
役員の改選の年、定時評議員会の日には次の順序で会議が並びます。
- 定時評議員会 — 計算書類を承認し、理事・監事を選任する
- 理事会 — 新しい理事の中から理事長を選定する
理事が決まらなければ理事長を選定できないため、この順序は動かせません。
評議員の改選も重なる年は、評議員選任・解任委員会で後任の評議員を選びます。今の評議員の任期は、定時評議員会の終結の時まで続きます(法第41条第1項)。そのため、その定時評議員会で審議・議決するのは、任期中の今の評議員です。後任の評議員の就任時期と、当日の出席者・議決者を取り違えないよう、定款の選任方法とあわせて確認してください。
そのすべての手前に監事監査があります。計算書類は監事の監査を受けたうえで理事会の承認を経なければならないからです(法第45条の28第1項・第3項)。
前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。 3 第一項又は前項の監査を受けた計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、理事会の承認を受けなければならない。
逆算すると、年間のスケジュールは次のようになります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 4月〜5月上旬 | 計算書類・附属明細書・財産目録・事業報告の作成 |
| 5月中 | 監事監査(監事選任議案がある場合は監事の過半数の同意も取得)。候補者から就任承諾書・誓約書等を集める準備 |
| 定時評議員会の2週間以上前 | 理事会① 計算書類の承認、評議員会の日時・場所・議題・議案(役員候補者)の決定 |
| 評議員会の1週間前まで | 評議員会の招集通知を書面で発送(定款で短縮可) |
| 6月 | 評議員選任・解任委員会 → 定時評議員会 → 理事会② 理事長の選定 |
| 6月30日まで | 所轄庁への届出、資産総額の変更登記 |
理事会は2回開くことになります。計算書類を承認して評議員会を招集する理事会と、理事長を選定する理事会です。これを1回で済ませようとすると段取りが崩れます。
理事会①と定時評議員会の間は2週間空けます。計算書類等は「定時評議員会の日の二週間前の日」から事務所に備え置かなければならないためです(法第45条の32第1項)。FAQ 問29-3も、定時評議員会は2週間、それ以外の評議員会は1週間の間隔を置くとしています。
理事会②の新しい理事は、評議員会の当日まで決まりません。そのため1週間前に招集通知を出すことは事実上できず、理事・監事全員の同意による招集手続の省略を使い、評議員会と同じ日に開くのが一般的です。FAQ 問44-2も、招集手続の省略等により同日に開催できるとしています。
計算書類の作成期限は、社会福祉法第45条の27第2項により「毎会計年度終了後三月以内」、すなわち6月30日です。
理事会を開かずに決める「決議の省略」
急ぎの借入などで理事会を開く時間がないときは、決議の省略(いわゆる書面決議・みなし決議)が使えます。社会福祉法第45条の14第9項が一般法人法第96条を準用しています。
理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
要件は次の3つです。
- 定款に定めがあること
- 議決に加わることができる理事の全員が、書面または電磁的記録で同意すること(過半数ではない)
- 監事が異議を述べないこと
監事は黙っていれば3の要件を満たします。ただし指導監査ガイドラインでは、監事が異議を述べていないことを示す書面がないと文書指摘になり、監事からも事前に書面を取ることが望ましいとされています。実務では「理事用の提案書兼同意書」「監事用の確認書」「議事録」の3点をそろえます。
決議の省略の議事録は、書く事項が違う
決議の省略の議事録に書くのは、次の4つです(施行規則第2条の17第4項第1号)。
- 理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
- その事項を提案した理事の氏名
- 理事会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名
開いていない理事会を「○月○日に開催し」と書いてはいけません。「決議があったものとみなされた日」は、最後の同意がそろった日です。金融機関などから特定の日付の議事録を求められても、その日に合わせて作るのではなく、実際に同意がそろった日で作ります。議事録の内容は、理事が同意した提案そのものです。後から別の資料を差し込まないでください。
同意書などは、議事録と同じく、決議があったものとみなされた日から10年間、主たる事務所に備え置きます(法第45条の15第1項)。
混同しやすい2つのこと
- 書面議決は認められません。理事会を開いたうえで、欠席した理事が書面で議決権を行使することはできません。指導監査ガイドラインは、理事会の議決は対面(テレビ会議等を含む)で行うとしています。
- 理事長・業務執行理事の職務執行の報告(3か月に1回以上。定款で定めれば毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上。法第45条の16第3項)は、ガイドラインで「実際に開催された理事会(決議の省略によらない理事会)において行わなければならない」とされています。決議の省略ばかりで1年を回すと、この報告が欠けます。
評議員会にも決議の省略があります(一般法人法第194条、法第45条の9第10項で準用)。こちらは定款の定めがなくても、議決に加わることができる評議員全員の書面または電磁的記録による同意で成立します。
議事録の署名人と「賛成の推定」
理事会の議事録について、社会福祉法第45条の14第6項が定めています。
理事会の議事については、厚生労働省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもつて作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあつては、当該理事長)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
原則は「出席した理事および監事の全員」が署名します。ただし、定款で「出席した理事長」に限定する定めを置いている場合は、理事長と監事が署名すれば足ります。どちらに該当するかは、定款を確認する必要があります。
定款で理事長に限定していても、理事長が欠席した回は、出席した理事と監事の全員が署名しなければなりません(FAQ 問25)。
第8項も重要です。
理事会の決議に参加した理事であつて第六項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
議事録に異議をとどめなければ、賛成したものと推定されます。理事の責任は、そこから始まります。ガイドラインも、各理事の賛否を議事録に正確に記録するよう求めています。
出席者を正確に書き、10年間事務所に置く
議事録には、会議に出席した者の氏名と、テレビ会議などで出席した場合はその方法を書きます(施行規則第2条の15第3項、第2条の17第3項)。欠席した人を出席と書くのは、よくある誤りです。出欠の記録は、現況報告書の記載とも突き合わされます。
議事録は、評議員会・理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます(法第45条の11第2項、第45条の15第1項)。外部に事務局を任せていた時期の議事録も、法人の手元にそろっている必要があります。
役員報酬・退職慰労金を決めるのは誰か
理事の報酬等は、定款に額を定めていなければ、評議員会の決議で定めます(法第45条の16第4項で準用する一般法人法第89条)。理事会ではありません。
これとは別に、理事・監事・評議員の報酬等の支給基準を定め、評議員会の承認を受けます(法第45条の35第1項・第2項)。
指導監査ガイドラインによると、報酬等には退職手当も含まれます。退職慰労金は、支給基準で上限の算定方法を決めておけば、各理事の額を理事会が決める方法も認められます。その理事会では、対象の理事は特別の利害関係があるので議決に加わりません。
一方、理事が施設長など職員を兼ねている場合、職員として受ける給与や退職手当は、役員の報酬等に含まれません。
借入・担保提供・定款変更のときの機関決定
施設の土地・建物は、多くの場合、基本財産です。厚生労働省の通知「社会福祉法人の認可について」は、基本財産を処分・担保に供するときは所轄庁の承認を受ける旨を定款に明記するよう定めています。国庫補助で取得した財産を担保に入れる場合は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条による承認も別に必要です。
つまり、担保が付く借入では、次の手続が重なることがあります。
- 法人の機関決定(理事会。定款によっては評議員会も)
- 所轄庁の基本財産担保提供の承認
- 補助金の財産処分の承認
同じ通知は、定款変更の認可や基本財産の担保提供の承認が、資金の借入れが決まった後に形式的に行われることが多いと注意し、計画が固まった段階で事前に承認を受けるよう求めています。借入の相談を受けたら、まず担保と保証の有無を確かめてください。担保が付くかどうかで、必要な日数がまったく変わります。
土地・建物を取得して基本財産が増えるときは、定款変更が必要です。定款変更は評議員会の特別決議です(法第45条の9第7項第3号、第45条の36第1項)。所轄庁の手続は、基本財産の増加であれば届出で足り、それ以外の変更は認可を受けないと効力が生じません(法第45条の36第2項・第4項、施行規則第4条)。
実務でみられる誤りの例
- 所轄庁に約束した事項が、評議員会の議題に入っていない。改善状況報告書に「定時評議員会で役員を選任する」と書いたのに、評議員会を招集する理事会の議案に役員選任が入っていない、という例です。評議員会は招集時に定めた議題以外を決議できないため(法第45条の9第9項)、そのままでは役員を選任できません。報告書を作る担当者と議案を作る担当者が違うと起こります。
- 監事選任の議案について、監事の過半数の同意を得ていない。理事会の決議だけで評議員会に議案を提出してしまう例です。
- 理事会と評議員会の招集通知を同じ様式で運用している。評議員会の招集通知には書面要件と、議題・議案の概要の記載義務がありますが、理事会にはありません。
- 評議員会の招集手続を省略したので、理事会の決議も要らないと考える。省略できるのは招集通知の発送だけで、日時・議題を決める理事会の決議は省略できません。
- 規程の改定や借入を、理事会の決議なしに進める。理事会で委任の範囲を決めていなければ、借入はすべて理事会の決議が必要です。
- 決議の省略ばかりで年度を回し、理事長の職務執行報告が抜ける。職務執行の報告は、実際に開いた理事会で行う必要があります。
これらはいずれも、所轄庁の指導監査でよくある指摘事項に含まれます。定足数の不足や、特別の利害関係を有する理事の議決参加は、文書指摘の対象として明記されています。
理事会・評議員会の運営チェックリスト
- 定款を確認し、評議員会の議長、議事録署名人、理事会の議長、理事会の議事録署名人の4点を書き出している
- 評議員会の議題を、招集を決定する理事会の決議で定めている
- 評議員会の招集通知を、会日の1週間前までに書面で発送している(電磁的方法による場合は評議員の承諾を得ている)
- 招集通知に、日時・場所・目的である事項(議題)・議案の概要(役員選任なら候補者)を記載している
- 定時評議員会の招集を決める理事会を、評議員会の2週間以上前に開いている
- 評議員・役員の就任承諾書と、欠格事由等に当たらないことの確認書類をそろえている
- 監事選任の議案を提出する年は、監事の過半数の同意を事前に得ている
- 特別決議(監事の解任、定款変更、解散)の対象議案について、3分の2以上の賛成を確保できるか確認している
- 特別の利害関係を有する理事が議決に加わっていないか確認し、確認したことを議事録に残している
- 借入・財産の処分などが、理事会で決めた委任の範囲(専決規程)に入っているか確認している
- 決議の省略では、理事全員の同意書と監事の確認書をそろえ、議事録に「みなされた日」を書いている
- 理事長・業務執行理事の職務執行報告を、実際に開いた理事会で行っている
- 議事録の出席者の記載が正確で、議事録を10年間主たる事務所に備え置いている
- 役員改選の年は、理事会を2回開催する前提でスケジュールを組んでいる
- 理事長未選定の理事会の議長について、定款の定めを確認している
- 前回の指導監査の指摘と改善状況報告書の内容が、今年の議案に反映されている
まとめ
社会福祉法人の理事と評議員、理事会と評議員会の違いを整理します。
- 理事は評議員会が選び、任期は2年以内・6人以上。評議員は定款の定めで選び、任期は4年以内(定款で6年まで)・理事の員数を超える数で、役員や職員を兼ねられない(法第39条〜第45条)
- 理事会は業務執行の決定・理事の職務執行の監督・理事長の選定を行う機関(法第45条の13)
- 評議員会は役員の選任や計算書類の承認など、法定事項を決議する機関
- 理事会の招集通知に議題や議案書を記載する法的義務はなく、理事・監事全員の同意があれば招集手続を省略できる(一般法人法第94条準用)
- 評議員会の招集通知は書面によることが原則で、議題と議案の概要の記載が必要。通知に記載のない事項は決議できない(法第45条の9第9項、一般法人法第181条・第182条準用、施行規則第2条の12)
- 評議員会も評議員全員の同意で招集手続を省略できるが、日時・議題を決める理事会の決議は省略できない(一般法人法第183条準用)
- 理事会の決議の省略は、定款の定め・理事全員の同意・監事の異議なしが要件。職務執行の報告は実際に開いた理事会で行う
- 多額の借財など重要な業務執行の決定は、理事長に委任できない(法第45条の13第4項)
- 理事の報酬等は、定款に定めがなければ評議員会が決める
- 評議員会の議題を決めるのは理事会の決議
- 監事選任の議案を評議員会に提出するには、監事の過半数の同意が必要(法第43条第3項)
- 理事長は理事会が理事の中から選定する。理事長未選定の理事会の議長の扱いは定款による。理事長の職務代理者を定める定款の定めは無効
- 役員改選の年は、計算書類を承認する理事会と、理事長を選定する理事会の2回が必要。1回目は定時評議員会の2週間以上前に開く
条文は読めば書かれています。しかし理事会・評議員会の手続に向き合う機会は年に一度、役員改選なら数年に一度しかありません。定款と条文を並べて一つずつ確認するところから始めてください。
鯵坂税理士事務所では、社会福祉法人の理事会・評議員会の運営を支援しています。定款と法令に照らした議案書の作成、役員改選の年の段取り、監事監査から所轄庁への届出までお手伝いします。お気軽にご相談ください。
この記事で引用した法令
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第31条、第39条、第40条、第41条、第43条、第44条、第45条、第45条の8、第45条の10、第45条の11、第45条の15、第45条の16、第45条の32、第45条の35、第45条の36、第45条の6、第45条の9、第45条の13、第45条の14、第45条の17、第45条の18、第45条の27、第45条の28 — e-Gov法令検索
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第72条、第84条、第89条、第92条、第94条、第96条、第181条、第182条、第183条、第194条 — e-Gov法令検索
- 社会福祉法施行規則(昭和26年厚生省令第28号)第2条の12、第2条の15、第2条の17、第4条 — e-Gov法令検索
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第22条 — e-Gov法令検索
- 社会福祉法人指導監査ガイドライン(厚生労働省) — PDF
- 社会福祉法人制度改革に関するFAQ(厚生労働省) — PDF
- 社会福祉法人の認可について(厚生労働省) — PDF