社会福祉法人の理事・監事の任期は「2年」とよく言われます。ただ、条文が決めているのは期間の長さではなく、終わる時点です。この違いを押さえておかないと、年度の途中で選んだ役員の任期を読み違えたり、補欠で入った役員だけ改選の年がずれたりします。
この記事では、次の3点を条文に沿って整理します。
- 任期が「いつ」終わるのか、具体的な日付での数え方
- 改選・選任・重任・再任・補欠といった言葉の違い
- 任期の途中で役員が辞めたとき、欠けたときに何が起きるか
理事会と評議員会の違いや、改選の年の年間スケジュールは「社会福祉法人の理事と評議員の違い」で解説しています。あわせてご覧ください。
任期は「2年間」ではなく「定時評議員会の終結の時まで」
役員の任期は、社会福祉法第45条でこう決まっています。
役員の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。
ここでいう「役員」は理事と監事です。読み方は次の3段階です。
- 選任された日から2年以内に終わる会計年度を数える
- そのうち最後の会計年度を選ぶ
- その会計年度の決算を承認する定時評議員会が終わった時に任期が終わる
多くの法人は4月から翌年3月までが会計年度で、定時評議員会は6月に開きます。以下はその前提で数えます。
6月の定時評議員会で選んだ場合
令和8年6月の定時評議員会で選任された理事の例です。選任から2年後は令和10年6月です。
| 会計年度 | 終わる日 | 選任後2年以内に終わるか |
|---|---|---|
| 令和8年度 | 令和9年3月31日 | 終わる |
| 令和9年度 | 令和10年3月31日 | 終わる(これが最後) |
| 令和10年度 | 令和11年3月31日 | 終わらない |
最後に当たるのは令和9年度です。令和9年度の決算を承認するのは令和10年6月の定時評議員会なので、任期は令和10年6月の定時評議員会が終わった時までです。ほぼちょうど2年になります。
年度の途中で選ぶと、2年より短くなることがある
令和8年10月に臨時の評議員会で理事を1人選んだ場合を考えます。選任から2年後は令和10年10月です。
- 令和8年度(令和9年3月に終わる)と令和9年度(令和10年3月に終わる)は、2年以内に終わる
- 令和10年度は令和11年3月に終わるので、2年を超える
最後は令和9年度で、任期は令和10年6月の定時評議員会の終結の時までです。在任は約1年8か月になります。
条文は「2年以内に終了する会計年度」で区切っているので、任期の長さは選んだ時期によって変わります。7月から翌年3月までに選ぶと2年より短くなり、そのぶん、ほかの理事と改選の時期がそろいます。
逆に、4月から定時評議員会の前までに選ぶと、2年を少し超えます。厚生労働省の「社会福祉法人制度改革に関するFAQ」(問31)は、4月中旬の臨時評議員会で選んだ理事の任期を「2年2ヶ月間余」と例示しています。
このため、定款で任期を「2年」という期間で書くのは適当ではありません。同じFAQ(問32)は、年度末に選んだ場合に法定の最長の任期を超えてしまうので、そうした規定を設けることは「適当ではない」としています。
数え始めるのは「選任決議の日」
任期の起算点は、評議員会で選任を決議した日です。就任承諾書の日付が後でも、決議の効力が生じる日を後ろにずらしても、起算点は動きません(同FAQ 問33)。改選を前倒しで決議しておく場合は、この点に注意してください。
「終結の時」まで在任する
任期は定時評議員会の日の朝に終わるわけではありません。会議が終わった時まで続きます。
そのため、改選の年の定時評議員会では、計算書類の承認も次の役員の選任も、今の理事・監事が在任したまま行われます。新しい理事が就任するのは評議員会が終わってからです。理事長の選定は、その後の理事会で行います。
評議員の任期は4年(定款で6年まで)
評議員の任期も、同じ形で決まっています(法第41条第1項)。
評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を選任後六年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで伸長することを妨げない。
数え方は役員と同じで、「2年」を「4年」(定款で定めれば「6年」)に置き換えます。役員と評議員で改選の年がずれるのはこのためです。
改選・選任・重任・再任・補欠の違い
「改選」と「選任」は、検索でもよく並べて調べられている言葉です。条文に出てくるのは「選任」で、「改選」「重任」は実務の言葉です。
| 言葉 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 選任 | 評議員会の決議で役員を選ぶこと(法第43条第1項) | 新しく選ぶ場合も、続けて選ぶ場合も、すべて「選任」 |
| 改選 | 任期満了に合わせて、役員全員を選び直すこと | 「役員改選の年」「改選の議案」 |
| 再任 | 任期が終わった人を、もう一度選ぶこと | 回数の制限はありません(下記) |
| 重任 | 任期満了と同時に再任され、空白なく引き続き在任すること | 議事録・登記で「○○(重任)」と書く |
| 補欠 | 任期の途中で辞めた人などの後に入る役員 | 任期をどう数えるかに注意(次の節) |
| 増員 | 定款の員数の範囲で、役員を増やすこと | 補欠ではないので、任期は原則どおり新しく数える |
再任には回数の制限がありません。厚生労働省の通知「社会福祉法人の認可について」は、次のように示しています。
役員を再任することは差し支えなく、期間的な制限はないこと。
改選の議案では、新任の人も重任の人も、全員を「選任」の議案として評議員会にかけます。続けて務める人がいても、議案から外してはいけません。前の任期は定時評議員会の終結の時に終わっているので、選び直さなければ、その人は役員でなくなります。
補欠の役員の任期は、定款に定めがあるかで変わる
任期の途中で理事が1人辞め、後任を選んだとします。後任の任期は、定款に定めがなければ、選ばれた時から法第45条どおりに新しく数えます。
たとえば令和8年6月に全員を選んだ法人で、令和9年10月に後任の理事を選ぶと、次のようにずれます。
| 任期の終わり | |
|---|---|
| ほかの理事(令和8年6月選任) | 令和10年6月の定時評議員会の終結の時 |
| 後任の理事(令和9年10月選任) | 令和11年6月の定時評議員会の終結の時 |
選任から2年後の令和11年10月までに終わる会計年度は、令和9年度(令和10年3月に終わる)と令和10年度(令和11年3月に終わる)です。最後は令和10年度なので、後任の理事だけ改選の年が1年遅れます。
一方、1年目(令和8年度中)に選んだ後任なら、2年以内に終わる最後の会計年度はほかの理事と同じ令和9年度になり、ずれません。ずれが出るのは、2年目に入ってから選んだ場合です。
ずれを防ぐには、定款で補欠の役員の任期を前任者の残りの任期にそろえます。法第45条ただし書が「定款によつて、その任期を短縮することを妨げない」としているためです。厚生労働省が示す社会福祉法人定款例の備考にも、次の一項を加える形が示されています。
2 補欠として選任された理事又は監事の任期は、前任者の任期の満了する時までとすることができる。
評議員については、法第41条第2項に直接の定めがあります。定款で定めれば、補欠の評議員の任期を、退任した評議員の任期が満了する時までにできます。
自分の法人の定款に、役員と評議員それぞれの補欠の定めがあるか確認してください。宮城県も、定款変更案をつくる際の留意事項で、この定めがないと補欠で選ばれた人とほかの人の任期に差が出ると注意しています。
なお、補欠の定めは「補欠」として選ばれた人に使うものです。員数を増やすために選んだ増員の役員は、前任者がいないので、原則どおり選任の時から新しく数えます。
欠けたときに備えて、補欠をあらかじめ選んでおける
役員の員数が欠けるときに備えて、評議員会で補欠の役員を前もって選んでおくこともできます(法第43条第2項)。その場合、評議員会では次のことも決めなければなりません(社会福祉法施行規則第2条の9第2項)。
- その候補者が補欠の役員であること
- 特定の役員の補欠とするときは、その旨とその役員の氏名
- 同じ役員に2人以上の補欠を選ぶときは、補欠どうしの優先順位
- 就任前に選任を取り消すことがあるときは、その旨と取消しの手続
この決議の効力は、定款に別の定めがなければ、決議後最初に開く定時評議員会の開始の時までです(同条第3項)。毎年の定時評議員会で選び直す前提の仕組みと考えてください。
厚生労働省のFAQ(問34)は、補欠の役員をあらかじめ選んでおくのに定款の定めを条件にしていません。ただ、所轄庁の手引きの中には、定款に定めを置くよう求めているものもあります。使うときは、所轄庁の考え方を確かめてください。
任期の途中で役員が欠けたとき
任期満了・辞任で欠けた人は、後任が就任するまで役員の権利義務を持つ
法律や定款で決めた役員の人数が欠けたとき、任期の満了または辞任で退任した役員は、後任が就任するまで、引き続き役員としての権利義務を持ちます(法第45条の6第1項)。
この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
理事は6人以上、監事は2人以上でなければなりません(法第44条第3項)。たとえば理事が6人ちょうどの法人で1人が辞任しても、後任が就任するまでは、辞任した人が理事としての権利義務を持ち続けます。理事会の定足数が急に足りなくなる事態を防ぐための定めです。
ただし、条文が対象にしているのは「任期の満了又は辞任」で退任した人だけです。亡くなった場合や解任された場合は、この定めでは役員の権利義務は残りません。
事務が止まりそうなら、所轄庁が一時役員を選べる
後任がなかなか決まらず、事務が遅れて損害が出るおそれがあるときは、所轄庁が、利害関係人の請求によって、または職権で、一時的に役員の職務を行う人を選ぶことができます(法第45条の6第2項)。
3分の1を超えて欠けたら、遅滞なく補充する
定款で決めた理事の員数の3分の1を超える人数が欠けたときは、遅滞なく補充しなければなりません(法第45条の7第1項)。監事にも同じ定めが準用されます(同条第2項)。
理事のうち、定款で定めた理事の員数の三分の一を超える者が欠けたときは、遅滞なくこれを補充しなければならない。
役員を任期の途中で辞めさせるとき(解任)
評議員会は、次のどちらかに当たる役員を、決議によって解任できます(法第45条の4第1項)。
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき
- 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、またはこれに堪えないとき
解任は評議員会の決議で行います。理事会が理事を辞めさせることはできません。
決議の要件は、理事と監事で違います。理事の解任は通常の決議ですが、監事の解任は、議決に加わることができる評議員の3分の2以上(定款でこれより高い割合を定めた場合はその割合)の多数による決議が必要です(法第45条の9第7項第1号)。
7 前項の規定にかかわらず、次に掲げる評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて行わなければならない。 一 第四十五条の四第一項の評議員会(監事を解任する場合に限る。)
理事長の任期と、選び直し・登記
理事長には、理事とは別の任期はありません。理事会が「理事の中から」理事長を選定するので(法第45条の13第3項)、理事としての任期が終われば、理事長でもなくなります。
3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
改選の年は、定時評議員会で理事を選んだあと、新しい理事で理事会を開き、理事長を選定します。同じ人が引き続き理事長を務める場合も、この選定は省けません。
理事長は「代表権を有する者」として登記されています(組合等登記令第2条第2項第4号)。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に主たる事務所の所在地で変更の登記をしなければなりません(同令第3条第1項)。
組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
同じ人が続けて理事長になる場合(重任)も、変更の登記が必要です。理事の任期満了でいったん理事長でなくなり、改めて選定されて就任するためです。名古屋市の手引きも「再任(理事長が変わらない)の場合」について、選定から2週間以内に変更登記が必要としています。法務局の申請書の様式にも「理事長の重任」の書き方が示されています。重任の登記を忘れて、所轄庁の監査で指摘された例もあります。
添付書類は法務局によって扱いが違うことがあるので、事前に確認しておくと安心です。所轄庁への届出が要るかどうかも自治体で違います(理事長が交代したときだけ届出を求める所轄庁もあります)。
なお、理事長が任期満了や辞任で欠けた場合も、次の理事長が就任するまでは、退任した理事長が理事長としての権利義務を持ちます(法第45条の17第3項で第45条の6第1項を準用)。
改選の年に確かめること
- 今の理事・監事・評議員が、それぞれどの定時評議員会の終結の時に任期満了になるか、一覧にしてある
- 年度の途中で選んだ人、補欠で入った人の任期を、ほかの人と取り違えていない
- 定款に、役員と評議員の補欠の任期をそろえる定めがあるか確認した
- 改選の議案に、続けて務める人(重任)も含めて全員を載せた
- 続けて務める人も、就任承諾書、欠格事由や親族等の特殊の関係に当たらないことの確認を取り直した
- 監事の選任議案(重任を含む)に、今の監事の過半数の同意を得た
- 理事の員数(6人以上)・監事の員数(2人以上)と、定款の員数を満たしている
- 定時評議員会のあとに、理事長を選定する理事会の段取りがある
- 理事長の変更登記(重任でも必要)を2週間以内に出せる日程になっている
- 任期の途中で欠員が出たとき、権利義務が残る人(任期満了・辞任)と残らない人(死亡・解任など)を区別している
まとめ
- 役員の任期は「選任後2年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで」。選んだ時期によって、在任は2年より短くも長くもなる
- 評議員は同じ形で4年(定款で6年まで)
- 「選任」が条文の言葉。「改選」「重任」は実務の言葉で、続けて務める人も毎回選任の議案にかける
- 補欠の役員の任期は、定款に定めがなければ新しく数えるので、改選の年がずれる。定款例にある一項で前任者の残りの任期にそろえられる
- 任期満了・辞任で欠けた人は、後任が就任するまで権利義務を持つ。3分の1を超えて欠けたら遅滞なく補充する
- 理事長は理事の任期とともに終わる。改選のたびに理事会で選定し、同じ人が続ける場合も変更の登記を2週間以内に
任期の数え方は、条文を一度読めば難しくありません。それでも数年に一度の作業なので、改選の年が近づいたら、役員の一覧と定款を並べて確かめるところから始めてください。
鯵坂税理士事務所では、社会福祉法人の理事会・評議員会の運営を支援しています。役員の任期の一覧づくり、改選の議案と議事録、定款の見直し、所轄庁への届出までお手伝いします。お気軽にご相談ください。
この記事で引用した法令・資料
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第41条、第43条、第44条、第45条、第45条の4、第45条の6、第45条の7、第45条の9、第45条の13、第45条の17 — e-Gov法令検索
- 社会福祉法施行規則(昭和26年厚生省令第28号)第2条の9 — e-Gov法令検索
- 組合等登記令(昭和39年政令第29号)第2条、第3条 — e-Gov法令検索
- 社会福祉法人の認可について(厚生労働省) — PDF
- 社会福祉法人制度改革に関するFAQ(厚生労働省、令和6年9月改訂) — PDF
- 評議員・理事・監事を選任するときの注意点(名古屋市) — PDF
- 社会福祉法人変更登記申請書の様式(法務局) — PDF
- 令和元年度 社会福祉法人指導監査の実施状況(鳥取県) — PDF
- 社会福祉法人定款例(厚生労働省社会・援護局福祉基盤課 平成29年3月29日事務連絡の別添) — PDF
- 定款変更案の作成にあたっての留意事項(宮城県) — PDF