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社会福祉法人の決算書の見方・作り方|3つの計算書類の違い・12表・決算日程

決算

社会福祉法人の決算書は、一般企業の財務諸表とは異なる独自の体系を持っています。資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の3つが柱で、これに附属明細書・財産目録・注記が加わります。

作成期限は、社会福祉法第45条の27第2項により毎会計年度終了後3か月以内です。会計年度は4月1日から翌年3月31日まで(法第45条の23第2項)なので、6月30日が期限です。6月30日は、所轄庁への届出の期限でもあります(法第59条)。その前に監事監査・理事会・評議員会を済ませるので、書類づくりは実際にはもっと早く終える必要があります。

この記事では、決算書の全体像、3つの計算書類の見方と違い、三表の一致チェック、決算の日程までを整理します。

この記事でわかること

  • 決算で作る書類の全体像(計算書類12表・附属明細書・財産目録・注記)と、省略できる場合
  • 資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の見方
  • 事業活動計算書と資金収支計算書の違い
  • 三表と財産目録の数字が一致しているかの確かめ方
  • 監事監査から6月30日の届出までの日程

社会福祉法人の決算書とは?必要な書類の全体像

法律上は2つ、会計基準で3つ

社会福祉法第45条の27第2項は、「計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。…)及び事業報告並びにこれらの附属明細書」を作成するよう定めています。会計基準第7条の2は、この「収支計算書」を資金収支計算書と事業活動計算書に分けています。そのため、計算書類は次の3つになります。

計算書類何を示すか一般企業にたとえると
資金収支計算書支払資金の増減(会計基準第12条)キャッシュ・フロー計算書
事業活動計算書純資産の増減(会計基準第19条)損益計算書
貸借対照表年度末の資産・負債・純資産の状態(会計基準第25条)貸借対照表

このほかに、附属明細書、財産目録(法第45条の34第1項)、事業報告とその附属明細書(法第45条の27第2項)を作ります。計算書類とその附属明細書は、作成した時から10年間保存します(法第45条の27第4項)。

計算書類の前提となる会計基準の全体像は社会福祉法人の会計基準とは?、計算書類に出てくる科目は勘定科目一覧と仕訳例で解説しています。

計算書類は「3種類 × 4様式」の12表

会計基準第7条の2第1項は、3つの計算書類をそれぞれ4つの単位で作るよう定めています。

様式資金収支計算書(第1号)事業活動計算書(第2号)貸借対照表(第3号)何を表すか
第1様式法人単位資金収支計算書法人単位事業活動計算書法人単位貸借対照表法人全体
第2様式資金収支内訳表事業活動内訳表貸借対照表内訳表事業区分(社会福祉事業・公益事業・収益事業)別
第3様式事業区分資金収支内訳表事業区分事業活動内訳表事業区分貸借対照表内訳表事業区分の中の拠点区分別
第4様式拠点区分資金収支計算書拠点区分事業活動計算書拠点区分貸借対照表拠点ごと

決算書を読むときは、まず第1様式(法人単位)の3表で法人全体をつかみ、次に第4様式(拠点区分)で施設ごとの状態を見るのが基本の順番です。

省略できる表

会計基準第7条の2第2項により、次の場合は一部の表を作らなくてかまいません。

法人の状況省略できる表
事業区分が社会福祉事業だけ第2様式(内訳表)
拠点区分が1つだけ第2様式と第3様式
ある事業区分の中の拠点区分が1つだけその事業区分の第3様式

省略したときは、注記の「法人が作成する計算書類と拠点区分、サービス区分」にその旨を書きます。

資金収支計算書の見方

資金収支計算書は、会計基準第12条において「当該会計年度における全ての支払資金の増加及び減少の状況を明瞭に表示するもの」と定められています。

「支払資金」は現金預金より広い

支払資金には、現金預金だけでなく、すぐに現金になる事業未収金や、すぐに支払う事業未払金なども含まれます(運用上の取扱い5)。そのため、キャッシュ・フロー計算書の「資金」より範囲が広くなります。

一方で、流動資産・流動負債でも除かれるものがあります。会計基準第13条の原文です。

支払資金は、流動資産及び流動負債(経常的な取引以外の取引によって生じた債権又は債務のうち貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するものとして固定資産又は固定負債から振り替えられた流動資産又は流動負債、引当金及び棚卸資産(貯蔵品を除く。)を除く。)とし、支払資金残高は、当該流動資産と流動負債との差額とする。

除かれるもの具体例
1年以内に期限が来るため、固定資産・固定負債から振り替えた流動資産・流動負債(経常的な取引以外のもの)1年以内返済予定設備資金借入金、1年以内回収予定長期貸付金
引当金賞与引当金、徴収不能引当金
棚卸資産(貯蔵品を除く)給食用材料、医薬品、商品・製品、原材料

貯蔵品だけは支払資金に含まれます。この点を取り違えると、資金収支計算書と貸借対照表の残高が合いません。

3つの区分

資金収支計算書は、次の3区分で表示します(会計基準第15条・第16条)。

区分入るもの(会計基準第16条)
事業活動による収支経常的な事業活動による収入・支出。受取利息配当金収入と支払利息支出もここに入る
施設整備等による収支固定資産の取得・売却、施設整備等補助金収入、施設整備等寄附金収入、設備資金借入金の借入れと元金償還
その他の活動による収支長期運営資金の借入れと返済、積立資産の積立てと取崩し、投資有価証券の購入と売却など

借入金は、施設整備のための借入金(設備資金借入金)なら「施設整備等」、運営資金の借入金(長期運営資金借入金)なら「その他の活動」と、用途で区分が分かれます。

見方のポイント

  1. 事業活動資金収支差額はプラスか — マイナスなら、日常の事業運営だけで支払資金が減っています。
  2. 事業活動資金収支差額で、借入金の元金返済をまかなえているか — 元金返済は「施設整備等」「その他の活動」の区分に出ます。事業活動で生んだ資金で返せているかを見ます。
  3. 予算と決算の差 — 法人単位と拠点区分の資金収支計算書には予算欄があり、決算額と並べて書きます。著しい差がある科目は、備考欄に理由を書きます(会計基準第16条第5項・第6項)。

最終行の当期末支払資金残高は、貸借対照表から計算した支払資金の額と一致しなければなりません。

事業活動計算書の見方

事業活動計算書は、会計基準第19条で「当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示するもの」と規定されています。企業会計の損益計算書に当たりますが、「利益」ではなく「増減差額」で表します。

4つの部と差額

事業活動計算書は4つの部に分かれ(会計基準第21条)、上から順に差額を足し上げていきます(同第22条)。

部主な中身部の差額足し上げた差額
サービス活動増減の部本業の収益(介護報酬等)と費用(人件費・事業費・事務費・減価償却費等)サービス活動増減差額-
サービス活動外増減の部受取利息配当金、支払利息、有価証券の売却損益などサービス活動外増減差額経常増減差額(=サービス活動増減差額+サービス活動外増減差額)
特別増減の部施設整備等補助金収益、施設整備等寄附金収益、基本金組入額、国庫補助金等特別積立金積立額、固定資産の売却損益など特別増減差額当期活動増減差額(=経常増減差額+特別増減差額)
繰越活動増減差額の部前期繰越活動増減差額、基本金取崩額、その他の積立金の積立額・取崩額-次期繰越活動増減差額

見方のポイント

  1. サービス活動増減差額 — 本業で黒字か
  2. 経常増減差額 — 借入金の利息なども含めて黒字か
  3. 当期活動増減差額 — 補助金や固定資産の売却など、臨時の要因も含めた結果

施設整備の補助金や基本金に入れる寄附金は、特別収益に計上したうえで、同じ額を国庫補助金等特別積立金積立額・基本金組入額として特別費用に計上します(運用上の取扱い10・11)。そのため、これらの受入れで当期活動増減差額がふくらむことはありません。

国庫補助金等特別積立金取崩額は「費用のマイナス」

補助金で取得した建物などは、減価償却費として毎年費用になります。これにあわせて、補助金に当たる部分の国庫補助金等特別積立金を取り崩し、サービス活動費用から控除します(会計基準第22条第1項)。補助金で賄った部分の減価償却費は、サービス活動増減差額にほとんど影響しない仕組みです。

補助金で取得した資産を売却・廃棄したときの取崩額は、特別費用の控除項目になります(同条第4項)。

貸借対照表の見方

貸借対照表は、会計基準第25条で「当該会計年度末現在における全ての資産、負債及び純資産の状態を明瞭に表示するもの」と定められています。資産の部は流動資産と固定資産に、負債の部は流動負債と固定負債に分けます(会計基準第26条第1項)。固定資産は、定款で定めた基本財産とその他の固定資産に分けて表示します。

純資産の部が一般企業と大きく異なります

純資産の部は、次の4つに分けます(会計基準第26条第2項)。

純資産の科目内容
基本金事業開始等に当たって財源として受け入れた寄附金の額(会計基準第6条第1項)
国庫補助金等特別積立金施設・設備の整備のために国、地方公共団体等から受領した補助金等の額(同条第2項)
その他の積立金将来の特定の目的の費用・損失に備えるため、理事会の議決に基づき積み立てた額(同条第3項)
次期繰越活動増減差額事業活動計算書で計算した次期繰越活動増減差額

貸借対照表の国庫補助金等特別積立金が毎年減っていくのは、上で説明した取崩しによるものです。

特定の目的のために持っている預貯金は、固定資産に入ります(運用上の取扱い6)。将来の修繕などに備えた「○○積立資産」が、流動資産ではなくその他の固定資産に出てくるのはこのためです。

事業活動計算書と資金収支計算書の違い

2つの計算書は同じ1年間の活動を表しますが、見ているものが違います。資金収支計算書は支払資金の出入り、事業活動計算書は純資産の増減です。

項目資金収支計算書事業活動計算書
何を表すか支払資金の増減(会計基準第12条)純資産の増減(会計基準第19条)
区分3区分(事業活動・施設整備等・その他の活動)4部(サービス活動増減・サービス活動外増減・特別増減・繰越活動増減差額)
減価償却費出ない(支払資金が動かない)出る(サービス活動費用)
引当金の繰入出ない(引当金は支払資金から除かれる)出る
建物などの取得出る(固定資産取得支出)出ない(減価償却を通じて毎年の費用になる)
借入金の元金返済出る(施設整備等・その他の活動)出ない
施設整備の補助金施設整備等補助金収入(施設整備等による収支)施設整備等補助金収益(特別収益)。同額を積立額として特別費用に計上
受取利息・支払利息事業活動による収支サービス活動外増減の部
比べる相手予算(法人単位・拠点区分に予算欄)前年度(当年度と前年度の決算額を並べる)

実務では、2つの差額の差がどこから来ているかを見ると理解が進みます。たとえば、事業活動計算書が赤字でも資金収支計算書の事業活動資金収支差額が黒字なら、減価償却費など支払資金の動かない費用が大きいことが考えられます。逆に、事業活動計算書が黒字でも資金が減っているなら、建物の取得や借入金の返済が原因かもしれません。

決算書からわかる経営指標

決算書を読むときによく使う指標の例です。計算式は一例です。同種の法人と比べるときは、比較先のデータ(独立行政法人福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標など)の定義に合わせてください。

指標計算式の例何を見るか
サービス活動増減差額率サービス活動増減差額 ÷ サービス活動収益本業でどれだけ差額が出ているか
経常増減差額率経常増減差額 ÷(サービス活動収益+サービス活動外収益)借入金利息等を含めた収益性
人件費率人件費 ÷ サービス活動収益収益に対する人件費の割合
経費率(事業費+事務費)÷ サービス活動収益人件費以外の経費の割合
純資産比率純資産 ÷ 資産合計財務の安定性
固定長期適合率固定資産 ÷(純資産+固定負債)固定資産を長期の資金でまかなえているか
支払資金残高の月数当期末支払資金残高 ÷(年間サービス活動費用 ÷ 12)何か月分の運転資金を持っているか

指標は、絶対値ではなく比較で読む

指標は、ひとつの数値だけでは判断できません。次の3つの比較で読みます。

  1. 経年比較 — 自法人の過去3〜5年の推移。悪化しているなら原因を特定します。
  2. 同種法人との比較 — 施設の種類ごとの指標と比べます。人件費率は、特別養護老人ホームと保育所では人員配置基準が違うため、そのままでは比べられません。
  3. 予算との比較 — 資金収支計算書の予算欄と比べます。差が大きいなら、予算の精度か期中の管理に問題があります。

サービス活動増減差額がマイナスのときに見るべきもの

サービス活動増減差額がマイナスでも、すぐに資金が尽きるわけではありません。減価償却費は、支払資金の出ていかない費用だからです。次の順で確認します。

  1. サービス活動増減差額に減価償却費を足し戻すとプラスになるか(国庫補助金等特別積立金取崩額の控除分は差し引いて考えます)
  2. 資金収支計算書の事業活動資金収支差額はプラスか
  3. 借入金の元金返済をまかなえているか — 元金返済は事業活動計算書には出ません
  4. 支払資金残高は何か月分あるか

減価償却費を足し戻してもマイナスであれば、事業の構造そのものの見直しが必要です。

三表と財産目録の一致チェック

決算作業でもっとも大事なのが、書類どうしの数字の一致です。指導監査ガイドラインでは、次の点が確認されます。

チェック一致させるもの
① 当期末支払資金残高資金収支計算書の当期末支払資金残高 = 貸借対照表の流動資産 − 流動負債(会計基準第13条で除くものを除く)
② 前期末支払資金残高資金収支計算書の前期末支払資金残高 = 前年度末の貸借対照表から計算した支払資金残高
③ 次期繰越活動増減差額事業活動計算書の次期繰越活動増減差額 = 貸借対照表の次期繰越活動増減差額
④ 当期活動増減差額事業活動計算書の当期活動増減差額 = 貸借対照表の「(うち当期活動増減差額)」
⑤ 純資産貸借対照表の純資産の部 = 財産目録の差引純資産
⑥ 財産目録の各合計財産目録の流動資産合計・基本財産合計・固定資産合計・資産合計・負債合計など = 法人単位貸借対照表
⑦ 附属明細書附属明細書の科目と金額 = 計算書類の科目と金額
⑧ 内部取引法人単位(第1様式)で、内部取引がすべて相殺消去されている

会計基準第33条は「財産目録の金額は、貸借対照表に記載した金額と同一とする。」と定めています。財産目録の「貸借対照表価額」欄は、「取得価額」欄から「減価償却累計額」欄を引いた額と同じになります。減価償却累計額の欄に取得価額を入れてしまうと、簿価がゼロと表示されるので注意してください。

指導監査ガイドラインでは、法人単位貸借対照表と財産目録の金額が一致しない場合や、財産目録の基本財産が定款と一致しない場合は文書指摘とされています。ほかの指摘事項は指導監査でよくある指摘事項で解説しています。

附属明細書・財産目録・注記

附属明細書は19種類

会計基準第30条第1項は、附属明細書を19種類挙げています。様式は、局長通知「運用上の取扱い」の別紙3(①〜⑲)です。

法人全体について作成するもの(①〜⑦)

  1. 借入金明細書
  2. 寄附金収益明細書
  3. 補助金事業等収益明細書
  4. 事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書
  5. 事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細書
  6. 基本金明細書
  7. 国庫補助金等特別積立金明細書

拠点区分ごとに作成するもの(⑧〜⑲)

  1. 基本財産及びその他の固定資産(有形・無形固定資産)の明細書
  2. 引当金明細書
  3. 拠点区分資金収支明細書
  4. 拠点区分事業活動明細書
  5. 積立金・積立資産明細書
  6. サービス区分間繰入金明細書
  7. サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書
  8. 就労支援事業別事業活動明細書
  9. 就労支援事業製造原価明細書
  10. 就労支援事業販管費明細書
  11. 就労支援事業明細書
  12. 授産事業費用明細書

全部を作る必要はありません。運用上の取扱い26では、該当する事由がなければ作成を省略できます。就労支援事業をしていない法人は、⑮〜⑱は要りません。

⑩拠点区分資金収支明細書と⑪拠点区分事業活動明細書は、どちらか一方で足ります。

  • 介護保険サービス・障害福祉サービスの拠点は、⑪を作り、⑩を省略できる
  • 子どものための教育・保育給付費や措置費による事業の拠点は、⑩を作り、⑪を省略できる
  • サービス区分が1つの拠点は、⑩⑪とも省略できる

財産目録

財産目録は、毎会計年度終了後3か月以内に作成し、5年間主たる事務所に備え置きます(法第45条の34第1項)。計算書類と同じく、定時評議員会の承認が必要です(社会福祉法施行規則第2条の40第1項)。

財産目録の「使用目的等」欄には、各資産の使用目的を簡潔に書きます。この欄は、後で説明する社会福祉充実残額の計算で、控除対象財産を判定するために使われます。

注記

計算書類の注記は、会計基準第29条第1項により、法人全体について16項目あります。

  1. 継続事業の前提に関する事項
  2. 重要な会計方針(資産の評価基準、減価償却の方法、引当金の計上基準など)
  3. 重要な会計方針を変更した場合の、その旨・理由・影響額
  4. 法人で採用する退職給付制度
  5. 法人が作成する計算書類並びに拠点区分及びサービス区分
  6. 基本財産の増減の内容及び金額
  7. 基本金または固定資産の売却・処分に係る国庫補助金等特別積立金の取崩しを行った場合の、その旨・理由・金額
  8. 担保に供している資産に関する事項
  9. 固定資産について減価償却累計額を直接控除した残額のみを記載した場合の、取得価額・減価償却累計額・当期末残高
  10. 債権について徴収不能引当金を直接控除した残額のみを記載した場合の、債権の金額・引当金の残高・債権の当期末残高
  11. 満期保有目的の債券の内訳・帳簿価額・時価・評価損益
  12. 関連当事者との取引の内容に関する事項
  13. 重要な偶発債務
  14. 重要な後発事象
  15. 合併または事業の譲渡・譲受けが行われた場合の、その旨及び概要
  16. その他必要な事項

拠点区分ごとにも、第2号〜第11号、第14号、第16号の注記が必要です(同条第4項)。ただし拠点区分が1つの法人は、拠点区分ごとの注記を省略できます。

該当がない項目の書き方は、項目によって違います。課長通知「運用上の留意事項」25(2)では、第1号・第3号・第9号・第10号は該当がなければ項目ごと省略できます。それ以外の項目は、項目名を残して「該当なし」などと書きます。

関連当事者との取引(第12号)は、範囲と金額の基準が決まっています。たとえば、常勤で報酬を受けている理事長やその近親者(3親等内の親族等)が議決権の過半数を持つ会社との取引で、年間1,000万円を超えるものは開示の対象です(会計基準第29条第2項、運用上の留意事項26)。

決算スケジュール(いつまでに何をするか)

時期の目安やること根拠
3月まで予算と実績に大きな乖離が見込まれるなら、補正予算を編成して承認を得る運用上の留意事項2(2)、定款
3月31日会計年度の終わり法第45条の23第2項
4月〜5月計算書類12表・附属明細書・財産目録・事業報告を作る法第45条の27第2項、第45条の34第1項
5月監事監査。監事は、計算書類を全部受け取った日から4週間、附属明細書を受け取った日から1週間を経過した日(理事と監事の合意で決めた日があればその日。いずれか遅い日)までに、監査報告の内容を通知する法第45条の28第1項、施行規則第2条の28
5月下旬〜6月上旬理事会で承認し、定時評議員会の日時・議題を決める法第45条の28第3項
評議員会の2週間前から計算書類等を主たる事務所に備え置く(5年間)法第45条の32第1項
6月定時評議員会。計算書類と財産目録を承認、事業報告は報告法第45条の30、施行規則第2条の40
6月30日まで所轄庁へ届出(財務諸表等電子開示システム)、資産の総額の変更登記、社会福祉充実残額があれば充実計画の申請(策定が不要な場合を除く)法第59条

理事会の承認から定時評議員会までは2週間空けます。計算書類等の備置きが「定時評議員会の日の二週間前の日」から始まるためです(法第45条の32第1項、厚生労働省「社会福祉法人制度改革に関するFAQ」問47-2)。評議員会の招集通知そのものは、1週間前まででかまいません。

会計監査人を置いている法人は、会計監査報告が無限定適正意見であるなどの条件を満たせば、計算書類を評議員会で承認ではなく報告で済ませられます(法第45条の31)。会計監査人を置かなければならないのは、最終会計年度のサービス活動収益が30億円を超えるか、負債が60億円を超える法人です(社会福祉法施行令第13条の3)。

理事会・評議員会の招集手続や決議要件は、社会福祉法人の理事と評議員の違いで解説しています。

補正予算の考え方

資金収支計算書の予算欄には、理事会で承認された最終補正予算額(補正がなければ当初予算額)を書きます。

年度の途中で予算と実績の乖離が見込まれるときは、補正予算を編成します。ただし、乖離が法人の運営に支障がなく、軽微な範囲にとどまる場合は不要です(運用上の留意事項2(2))。

指導監査ガイドラインでは、次の2つが文書指摘とされています。

  • 予算とその執行に軽微な範囲とは言えない乖離があるのに、補正予算を編成していない
  • 補正予算の編成について、定款に定める手続きをしていない

予算は支出の前に決めるものなので、補正予算も年度内に承認しておくのが基本です。補正予算を要しない「軽微な乖離」の範囲は、経理規程などで決めておきましょう。

決算書を手に入れる・見せる

財務諸表等電子開示システムで公表される

所轄庁への届出は、財務諸表等電子開示システムに記録する方法でも行えます(施行規則第9条)。この方法で届け出て、その内容が公表されれば、法人がインターネットで公表したものとみなされます(施行規則第10条第2項)。

そのため、ほかの社会福祉法人の計算書類も、このシステムを通じて見ることができます。同じ種類の施設を運営する法人と比べるときに役立ちます。

誰でも閲覧を請求できる

計算書類等は、評議員や債権者でなくても、誰でも閲覧を請求できます(法第45条の32第4項)。財産目録等も同じです(法第45条の34第3項)。法人は、正当な理由がなければ請求を拒めません。

決算後に待つ社会福祉充実残額の算定

決算書を作って届け出れば終わり、ではありません。

社会福祉法第55条の2第1項は、次のように定めています。

社会福祉法人は、毎会計年度において、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額を超えるときは、厚生労働省令で定めるところにより、…社会福祉充実計画…を作成し、これを所轄庁に提出して、その承認を受けなければならない。 一 当該会計年度の前会計年度に係る貸借対照表の資産の部に計上した額から負債の部に計上した額を控除して得た額 二 基準日において現に行つている事業を継続するために必要な財産の額として厚生労働省令で定めるところにより算定した額

第1号から第2号を引いた額が社会福祉充実残額です。残額が生じたら、原則として社会福祉充実計画を作って所轄庁の承認を受けます。ただし、以前に承認を受けた計画の実施期間中は新たに作る必要はありません(同項ただし書)。計画の策定費用が残額を上回ることが明らかな場合なども、計画の策定は不要とされています(社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A 問7)。

厚生労働省の通知「社会福祉充実計画の承認等について」では、次の式で計算します。

  • 社会福祉充実残額 = 活用可能な財産 −(社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等 + 再取得に必要な財産 + 必要な運転資金)
  • 活用可能な財産 = 資産 − 負債 − 基本金 − 国庫補助金等特別積立金
  • 必要な運転資金 = 年間事業活動支出の3か月分

控除対象になる財産かどうかは、科目ごとに決まっています。たとえば、現に社会福祉事業に使っている土地・建物は控除対象です。現金預金は原則として控除対象にならず、別枠の「必要な運転資金」で考えます。ただし、貸付事業の原資など、事業に使っている資産に当たるものは、例外的に控除対象として財産目録に分けて書きます(同Q&A 問25)。長期保有の投資有価証券や、目的を定めて積み立てた○○積立資産も、原則として控除対象になりません(国や寄附者から使途を特定された積立資産などは例外)。

決算書はこの計算の出発点です。基本財産とその他の固定資産の区分、積立資産の目的、財産目録の「使用目的等」欄が、そのまま充実残額の計算に効いてきます。

算定方法や控除対象財産の判定、充実計画の手続は社会福祉充実残額とはで解説しています。

よくある質問

計算書類は何種類ありますか?

法律上は「貸借対照表」と「収支計算書」の2つです(法第45条の27第2項)。会計基準で収支計算書が資金収支計算書と事業活動計算書に分かれるので3つになり、それぞれ法人単位から拠点区分まで4つの様式があるため、全部で12表です(会計基準第7条の2)。

拠点が1つの法人は、どの表を作ればいいですか?

拠点区分が1つなら、第2様式(内訳表)と第3様式(事業区分内訳表)を省略できます(会計基準第7条の2第2項)。法人単位(第1様式)と拠点区分(第4様式)の3表ずつを作ります。拠点区分ごとの注記も省略できます。

附属明細書は19種類すべて作る必要がありますか?

いいえ。該当する事由がないものは省略できます。また、拠点区分資金収支明細書と拠点区分事業活動明細書は、事業の種類に応じてどちらか一方で足ります(運用上の取扱い26)。

会計監査人を置かなければならないのはどんな法人ですか?

最終会計年度のサービス活動収益が30億円を超えるか、負債が60億円を超える法人です(社会福祉法第37条、施行令第13条の3)。定款で定めれば、それ以外の法人も任意に置けます(法第36条第2項)。

ほかの法人の決算書は見られますか?

はい。財務諸表等電子開示システムに届け出られた計算書類は公表されています。また、社会福祉法人の計算書類等や財産目録等は、誰でも閲覧を請求できます(法第45条の32第4項、第45条の34第3項)。

まとめ

  • 計算書類は資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の3つ。それぞれ4様式あり、全部で12表。拠点が1つなら一部を省略できる
  • 支払資金は現金預金より広く、事業未収金・事業未払金も含む。1年内振替分・引当金・棚卸資産(貯蔵品を除く)は除く(会計基準第13条)
  • 事業活動計算書は、サービス活動増減差額 → 経常増減差額 → 当期活動増減差額の順に読む
  • 減価償却費・引当金は事業活動計算書にだけ、建物の取得・借入金の元金返済は資金収支計算書にだけ出る
  • 一致チェックは、支払資金残高(当期末・前期末)、次期繰越活動増減差額、当期活動増減差額、財産目録の各合計と純資産
  • 附属明細書は19種類あるが、該当がなければ省略でき、⑩⑪はどちらか一方で足りる
  • 注記は16項目。第1・3・9・10号以外は、該当がなくても「該当なし」と書く
  • 理事会の承認から定時評議員会まで2週間空け、6月30日までに届出・登記を済ませる

決算は6月30日までに終える必要があり、監事監査や評議員会の日程を含めると、実際の作業期間は2〜3か月です。月次で残高を確かめ、三表の一致チェックを習慣にすることで、決算時の負担を大きく減らせます。


社会福祉法人の経理・決算でお困りのことがあれば、鯵坂税理士事務所にご相談ください。月次の帳簿管理から計算書類の作成、監事監査・指導監査への対応、所轄庁への届出までサポートいたします。

この記事で引用した法令・資料

  • 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第36条、第37条、第45条の23、第45条の27、第45条の28、第45条の30、第45条の31、第45条の32、第45条の34、第55条の2、第59条 — e-Gov法令検索
  • 社会福祉法施行令(昭和33年政令第185号)第13条の3 — e-Gov法令検索
  • 社会福祉法施行規則(昭和26年厚生省令第28号)第2条の28、第2条の40、第9条、第10条 — e-Gov法令検索
  • 社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号)第6条、第7条の2、第12条、第13条、第15条、第16条、第19条、第21条、第22条、第25条、第26条、第29条、第30条、第33条 — e-Gov法令検索
  • 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて(局長通知) — 厚生労働省
  • 社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項について(課長通知) — 厚生労働省
  • 社会福祉法人指導監査ガイドライン — 厚生労働省
  • 社会福祉充実計画の承認等について — 厚生労働省
  • 社会福祉法人制度改革に関するFAQ — 厚生労働省

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